すたこらサッサ、おうちに帰ろう

よもやま広告業界

コピーライター養成講座折り返し地点を過ぎると、ライターになれるだろう人、なれるかもしれない人、絶対なれない人が、ほぼ決まってくる。
例のCMソング作曲事件以来、H氏は「きっとなれる人」になっていた。オイラは?といえば「なれるかもしれない人」どまり。課題の方は7勝17敗って感じ。う~む…。

またまたラジオCMの課題が出たときの話だけれど、「あなたと旅と音楽と」という番組で流れる「L△ONシグナル」という商品のCMだった。歯ブラシとペーストがセットになっていて、透明のケースに入っているものだ。

オイラはこの課題をドラマ仕立てにした。週末に横浜の埠頭、海風に吹かれながら煙草をふかしているどこか寂しげな若い男。短くなった煙草を指で弾くと小さな赤い光が放物線を描いて消えていく。
スローモーションのように巡る、淡い恋の記憶…的な、超こっぱずかしいコピーだったなぁ~、確か。

そして、締めのナレーションが「ひと晩だけの一人旅。小さなへこみ(チューブの)と、私のシグナル。」だったと思う。これがなんと、ベスト3に選ばれたのだ。もう40年以上も前のことなのに、覚えてるものだねぇ。

そんなこんなで夏も終わりに差し掛かった頃、我ら仲良しグループも、どこぞに就職できるかしらん?的な話題が多くなり、いつものように「なかよしラーメン」を占拠していた。もちろんリーダー格はH氏だ。

この当時のH氏は、外資系の男性向けカツラの会社でバイトをしていた。カツラを作っていたのか、植毛の手伝いでもしていたのかは知らないけど、オイラはケ□タでチキンを揚げていたし、ほかのメンバーも似たり寄ったりだった。

それより驚いたのは、某女性週刊誌で、「私の上を通り過ぎて行った○十人の男たち」的な体験記事を投稿して稼いでいたことだ。ぜ~んぶ創作なんだけれど、ほぼ連載扱いだったらしいから、これまたゴイゴイスー!なのだ。

この頃からH氏の文才が頭抜けていたことは疑いようもない。原稿料2~3万円と聞いた覚えがある。おい、古い四畳半なら借りられる額ではないか。う~む、やっぱりこの人は違う。凡人のオイラにもそれだけは分かった。

「なかよしラーメン」での議論白熱し、あと2~3時間で終電という時間になった。帰り支度をするみんなをよそに、“よかったらウチに来て、もっと話さない”と、突然H氏からお誘いを受けた。エッ!もしや「朝まで生広告談義」?

むむむっ、ここは最優秀受講生の教えを乞うべきか。いやいや、滅相もない。そんな度胸はございませぬ。“ちょっと用事があるので…。”丁重にお断りして、銀座の夜を後にしたオイラなのでありました。

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